この度、gallery UG Tennozは12月13日(火)から12月28日(水)まで渡辺おさむ「お菓子のユートピア」を開催いたします。
渡辺はこれまで、スイーツデコをアートに昇華させた第一人者として、フェイクスイーツの作品を作り続け各所で展覧会を行ってきました。
日本での洋菓子の発祥の地、鹿児島やその他今年1年間の数多くの展覧会を通し、改めてスイーツやアートの存在意義を考えたことで、作り上げた自身のユートピアを展示いたします。
gallery UG2022年最後の展覧会となります。
ぜひご高覧ください。
gallery UG
「人の生き死にに関わるとき、文化や芸術は無力である。医療や福祉のような直接的な力には到底なり得ない。しかし、古来より人々の生活には必ず祈りの対象として、あるいは精神的な支えとして芸術が存在していたように、今、このような時代だからこそ芸術作品が本来持っている生きるための支えとなるのではないだろうか。ユートピアは決してどこにも存在することのない世界であるが、それを想像し希求することこそが、未来へ繋がるはずなのである。渡辺が本展覧会で「ユートピア」という言葉に託したのは、まさにこの点においてであろう。」
(個展のための寄稿文より抜粋)
金沢21世紀美術館
野中祐美子
「2020年小さな者にも大きな者にも、富める者にも貧しい者にも、世界の全ての者に、平等に襲いかかった非常なウィルスに、人々は祈りの先に救いがあると信じて、祈りを捧げてきました。
神に祈れど、ウィルスはとどまる事を知らず、新たに、戦争、大規模災害、国内では空前の不景気が襲う中、救いなどない事に気づきます。あるのは現実のみです。
遠い昔、仏教と共に、「唐菓子」が伝わり、ヨーロッパからはキリスト教と共に、洋菓子の礎である「南蛮菓子」が伝えられました。貴重なお菓子は神仏に捧げる神饌として、神仏と人をつなぐ存在となりました。
神話を紐解いてみると日本書紀に、常世の国(神の世界)から持ち帰ったもの、神が創造したものだとの表記がありました。生きるための食べ物ではない、人間の時間軸を越えた存在だったのではないでしょうか。
アートもお菓子も宗教も、実際には何の役にも立たないかもしれませんが、それが全くない世の中は非常に殺伐とした世界になってしまいます。
必ずしも必要ではないけれども、祈りの儀礼と心を豊かにするお菓子の存在する世界はあらゆる宗教が目指すユートピアなのかもしれません。
救いのない現実の中で、実現できないからこそ祈るような気持ちでひとつひとつデコレーションを積み上げ、自分だけのユートピアを作り上げました。」
渡辺おさむ