VOID

2023/08/04 -2023/08/26

gallery UG Tennoz

information

gallery UG Tennozでは、8月4日(金) - 8月26日(土)まで、岡田菜美 「VOID」を開催します。

2023 年 7 月 南條史生氏(*1)がキュレーションする NANJO SELECTION vol. 2(*2)にて「oneview」シリーズを発表したのは記憶に新しく、弊ギャラリー開催の本展では、2018 年より描き続けてきた「oneview」シリーズから派生した新シリーズ「VOID」を発表します。
岡田は、アクリル絵具を何層にも重ね、削りだす行為を繰り返すという方法により、抽象と具象が入り混じったような作品を制作しています。作品には、岡田⾃⾝が訪れた場所や見たことのある風景が幾重にもコラージュされ、新しい風景が描かれてきました。それらはどこにも存在しない虚構の風景ですが、観る者に郷愁や既視感を感じさせます。
新シリーズ「VOID」では、従来の記憶のコラージュに時間の概念が加わり、“変化と構築”が繰り返されて生み出された時空間を描いています。近年の「oneview」シリーズの中にもその事跡を窺うことができます。
本展で発表する作品には、画面の中には円相をイメージさせる“輪”が描かれていますが、岡田⾃⾝の記憶と時間の関係性への探求心と憧れが描かせているのではないでしょうか。そして、同時に観る者にも解釈を委ねています。
岡田作品は観る者が作品と対話することで作品が初めて意味を持ち始めます。また、その意味は観る者の数だけ生まれてくるのです。


◆南條史生氏より
岡田菜美の今回のシリーズ名は「VOID」何もない空間である。岡田菜美のシリーズは振り返ってみると何があったかわからない場所をテーマにした「がらんどう」、次に蓄積された記憶が結晶したような「one view」シリーズが生まれる。そして今回は記憶の中で繰り返される時間のループをテーマにした「VOID」に行き着いている。
淡く、少しばかりロマンティックにも見える風景には、宇宙的、存在論的ビジョンが織り込まれている。それは空中に浮かんだ不可解な円形の形象、強いて言うと円相とでもいえるイメージによって象徴されているだろう。ここに来た岡田の作品は禅的な悟りに近づいてきたのだろうか。抽象と具象、現実と記憶の間を往還する岡田の作品の新たな展開に期待したい。

南條史生(美術評論家 / 森美術館特別顧問 / アーツ前橋特別館長)




◆アーティストより
今回制作している絵画たちには、学生時代から取り組んでいた、あるイメージソースがあります。もともとは「がらんどう」という画題として作っていた絵画たちでした。
その時分では、「記憶の中にあった空間」というものについて考えていました。
例えば、普段通学で通りがかっていたところの一角が、ある日空き地になっていたことに気付いたが、そこには本来なにがあったのか思い出すことが出来ない。というような体験についてです。
確かに現実にはそこに何かが在ったのに全く思い返すことができないのです。
存在が意識されないというだけで、まるでなにも無かったかのようになる、そのような現象に当時の私は「がらんどう」という名前を付けて作品化していました。
その後、それは「存在があった匿名的な場所」という"スペース"への興味へと変わり、2018 年から「oneview」という絵画のシリーズに着手しました。
それは、匿名的で何処ともいえない風景を描いたもので、私達の潜在的な記憶の景色を作っているような仕事でした。
観た人によって、その人それぞれの中に蓄積された記憶が、はっと呼び起こされるような風景を立ち現せたかったのです。
そして、そのような仕事を続けて数年が経ち、私はあることに気付きました。
その作られた景色にも"四季"のように繰り返される単位があるということです。
つまり人の記憶は、時間が停止したような静止画的なものではなく、映像的で常に独⾃のループを続けているものなのではないでしょうか。
その気付きを得てからは、この着想により描かれた絵画群に「VOID」という呼称を与えました。
これは「がらんどう」から生まれた、「oneview」とは一対の兄妹のようなシリーズです。
「oneview」では一定の空間を指して描いているのに対し、「VOID」は"時間の輪"とも言えるような現象を描いています。ふたつのシリーズとも、同じところに属しながらも見せている役割が異なるのです。
今回は「記憶の中に時間が流れていればこのようなイメージになるのでは」というような試みになっています。「VOID」による記憶と時間の輪は、どのような形状をしているのか、私⾃⾝も探っているのです。

岡田菜美



*1 南條史生
森美術館特別顧問、アーツ前橋特別館長、エヌ・アンド・エー株式会社 代表取締役。1949 年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部、文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。国際交流基金(1978~1986)などを経て 2002 年より森美術館副館長、2006 年 ~2019 年まで森美術館館長を務めた。過去にヴェニス・ビエンナーレ日本館(1997)および台北ビエンナーレ(1998)コミッショナー、ターナープライズ審査委員(ロンドン、1998)、横浜トリエンナーレ(2001)、 シンガポール・ビエンナーレ(2006、2008)アーティスティックディレクター、茨城県北芸術祭総合ディレクター(2016)、ホノルル・ビエンナーレ キ ュラトリアルディレクター(2017)などを歴任。著書『疾走する アジア──現代アートの今を見る』(美術年鑑社、2010)、『アートを生きる』(角川書店、2012)。
*2 NANJO SELECTION
南條史生のキュレーションにより、今後の活躍が期待できる若手作家を紹介する企画展シリーズです。 第 2 弾として、岡田菜美個展 "いつか見た青い影 / A Whiter Shade of Pale" を、2023 年7 月 3 日(月)から 7 月 29 日(土)まで、N&A Art SITE(中目黒) にて開催しました。

ウェブサイト:https://nanjo-selection.com/

Exhibition Information

展覧会名
VOID
会期
2023/08/04 -2023/08/26
開廊時間
11:30 – 18:30
休廊日
月曜日
会場
gallery UG Tennoz
アーティスト
岡田菜美

Photo

Artworks

one view
45×60 cm
パネルにアクリル絵具、ラッカー
2022

one view
60×45 cm
パネルにアクリル絵具、ラッカー
2022

one view
91×70 cm
パネルにアクリル絵具、ラッカー
2022

one view
91×60 cm
パネルにアクリル絵具、ラッカー 
2022

Others

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