この度、gallery UG Tennozでは5月17日(金)から6月1日(土)まで、REI ITAYA PHOTO EXHIBITION “RAW” を開催します。
板谷麗は自宅や旅先のダイニングテーブルに実際に用意した野菜や生物などを配置し、自然光を利用して観察し被写体その物の存在感を写真に映し出す。一部では生々しく被写体の色合いを映し出し、一部では野菜達が瞬間的に意思を持ったのかと思うような姿になっている。それは優艶でもあり、緊張感を感じ取れる。
まるで被写体は意思を持って、板谷に映し出されるためだけに存在し、被写体自身が一番美しい姿を表現しているのではないかと思うような感覚に落ち入る。しかし、彼女の作品のタイトルに注目してほしい。
「人参のナムル / Carrots in Sesame Oil and Salt, Autumn」、「ビーフシチュー / Beef Stew, Autumn」など、全て板谷が実際に食した料理名となっているのである。意思を持っていた被写体は、その瞬間を記録した後「食べ物」となり、調理され日々の食事の一種となっていく。鑑賞者は何も知らずに作品だけを見た時に写真作品の表現を感じ、タイトルを知った後に、被写体が食材になっていく姿をイメージする。
目の前の写真だけでなく、鑑賞者のイメージ力までも作品として取り入れている。
元々時代や瞬間の一部を証明するための手段として使用されていた写真が、いつしか作品としての表現方法の媒体となり、板谷はその両者の要素を、限りなくアートに近い側から取り入れて行く。
この機会に是非ご高覧ください。
gallery UG
『自宅のカラー暗室の暗闇の中で、
現像液の入ったプロセッサーの運転音を聴いていると、
深く深く潜水しているような感覚に陥る。
そこで私は現実の1片を反芻しながら、
記憶と感情のスピードと、観察と記録について考えていた。
デジタルでの撮影を採り入れ始め、思考の場所が暗室とダイニングになった。
私はそこで多くの言葉を読み、話を聞き、食事をし、実感に変えるための策を練っている。
それは自宅だけではなく、旅先でも同様だった。
そんな生活を続けているのは、その思考の時間を超えていく程の衝撃を、
目の前の存在が与えてくれる時があるからだ。
わからない、だから知りたい。という欲を刺激されることもあるし、
知っていると思っていたことが実感に変わった際の衝撃に、痺れることもある。
この作品は、
「もし私が、何億光年も彼方の星に生まれていたならば、
進化と海に惹かれて地球探査に訪れているだろう。」
食卓でそんなことを考えながらスタートした。
「生き物は生き物を食べ、水は掴めるようで掴めない。」
地球探査のレポートを書くのであれば、そのことは記しておきたい。』
板谷 麗