霧のむこうの一角獣

2023/10/13 -2023/10/28

gallery UG Tennoz

information

このたび、2023 年 10 月 13 日(金)からgallery UG Tennozにて下山直紀「霧のむこうの一角獣」を開催します。

下山直紀は1972 年群馬県生まれ、2000 年多摩美術大学大学院美術学部彫刻専攻修了。
直近では、高崎市美術館にて特別展示「下山直紀 Atoma / Kenon 原子/ 空虚」が開催されるなど活躍しているアーティストです。
gallery UG の活動の要でもある 2020 年のグループ展「KIRINJI」、2021 年、2023 年には 「WOOD SCULPTURE」展の一翼を担いました。

本展覧会は、gallery UG では初となる下山氏の個展となります。
中世ヨーロッパ美術の最 高傑作と称されるタピスリー《貴婦人と一角獣》の1枚から着想を得た3対の作品をメインに展示。
そのうちの1点は、一貫して動物をモチーフに制作してきた下山氏にとって初の人物像となります。
さらに下山氏の制作の遍歴が窺える歴代の作品を展示します。
新旧作が一堂に会す展覧会となっておりますので、是非ご高覧ください。

gallery UG




 多摩美術大学大学院美術研究科を修了後、木彫の技術の研鑽を日々重ね、動物彫刻を 20年以上手掛けてきた下山だが、その表現には動物というモチーフの一貫性に対し、複層的 な展開が認められる。2000 年代の下山の初期活動を省みるならば、素材の多様性とともに 動物たちは植物との「複合体」として造形化された。そこには、進化論に基づく生命への 批評的洞察、さらには「擬態」への接近による認識論的な生成変化が、それら作品の特徴 として読み取れるだろう。その後、動物単体をモチーフとする 2010 年代の「人獣」シリー ズでは、メタフォリカルかつ擬人的な要素を備え、高村光雲をはじめとする日本の近代木 彫表現との接続が意図されることで、彫刻の更新が志向されていた。
 そのような長年にわたる実践により、醸成されてきた独自の彫刻観において、下山が手 放すことのなかった木という素材と取り結ばれた関係性は、極めて特殊なものといえる。 生命への愛を、また自然への畏怖を表明する作家にとって、木は人間と自然の関係を巨視 的に考察する上で、何より有効な媒体であり続けたはずだ。「人新世」と呼ばれる現代に おいて、生態学的な視点に立つ下山が、人間が及ぼす環境への甚大な影響を時にアイロニ ーを交え、動物の表象に人間の姿を投影していったのはそのためだ。さらにそこには、人 間と使役される動物/自然という二者の不均衡さへの自意識が、捻転するように織り込ま れていく。かつて下山は、趣味である渓流釣りへの言及において、生を奪うことへの葛藤 を表明していた。鋭利な刃物で木を彫り刻む行為こそ、河川に釣針の付いた糸を垂らすよ うに自然を介入していく主客関係そのものを示している。

論評「下山直紀の動物彫刻-原子・空虚・クリナメン」より抜粋
森啓輔(千葉市美術館学芸員)

Exhibition Information

展覧会名
霧のむこうの一角獣
会期
2023/10/13 -2023/10/28
開廊時間
11:30 – 18:30
休廊日
日曜日、月曜日
会場
gallery UG Tennoz
アーティスト
下山直紀

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